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早くに両親を亡くし、アパートでのひとり暮らしが長かった。
アパートとは言っても名ばかりの、掘っ立て小屋みたいなものだったが。
1、2階に2部屋づつの4部屋があり、その2階の1部屋を借りていた。
しかし建て付けが悪く窓がちゃんと閉まらない。
隙間テープでメ張りしても、冬なんか寝酒の飲み残した枕もとのビールが、
朝起きたら「凍れてるよ!」
よくもまぁ無事に生きていられたもんだ。
その代わり家賃が安かったので文句は言えめぇ。




勤めを終えて灯りも火の気も無い部屋に、ひとり帰宅した時の寒さは
身に凍みたなぁ。
流し台とトイレは付いていたが、風呂がないので近所の銭湯に行った。
仕事を終えバスで帰宅途中、1停留所前で下車して銭湯に寄るのだ。
その銭湯には洗面桶とタオル、石鹸を預かり置きしていた。
当時ホテル勤めだったので、忘年会や新年会のシーズンには
2,3日会社に泊り込みやら、飲みに行ったりして1週間ほど
帰宅しない日々もあった。
部屋にカギも掛けなかったが、まあ盗られる物も無かったけどね。




冬の寒い夜だった。
帰宅しアパートの表玄関を開けると1階の男性の住む部屋から
シャワーのような水音が。
 「エッ?シャワーなんか、このアパートにないぞ。もしや・・・」と思い、
大家さんに通報。 合鍵で部屋を開けると、水道管が凍結で破裂し水浸し。
「これだから、ひとり者に部屋貸すの嫌だもんね!」と大家のオバさんの嘆き。
以来、それを教訓に冬には前述のように帰宅しない日もあるので
水道の水抜きは欠かさなかった。




その頃朝野球をやっていたので、早朝に部屋のドアを開けようとしたら
開かない。
 「エッ!なんだべ」と、ドアをグイと力任せに押し開けると、階下の部屋の
ご主人がドアの前で寝込んでいたのだ。
多分酔っ払って酩酊の果てに、2階まで来て力尽きたのだろう。
余りにも寒そうに丸まって寝ているから、「風邪引くべ!」と思い
毛布を掛けてあげた。(俺って、優しいな・・・)
 その晩にご主人が済まなそうに「ありがとうございました」と御礼に来た。
蛇足ながら、そのご主人の奥さんとは小中学校の同級生なのだ。




だけど、ひとり暮らしで風邪引いて寝込んだ時は情けないね。
熱出してフトンの中でじっと横になっているけど、さりとて寝るでもなく。
喉が渇いてきて水を飲みたいけど起き上がるのも億劫だ。
そうこうしている内に腹が減ってくる。
 かといって「あなた、お粥が出来たわよ!」
と優しく言ってくれる人もいない。侘しく鼻水すすって横になるだけ。



いつだったか風邪を引いて寝込んでいる夕暮れ時だ、
階段をタタタタタッと昇ってくる足音がする。「あいつだ!」そう忠だ。
小、中学校の同級生の「ちゅう」だ。
だけど足音って、その人が誰かって判断出来るね。
そのちゅうだが酒癖が悪い。
風邪引いて寝込んでいる時に、酒の呑まされるのも敵わんと、
居留守を決め込んだ。
ドアを「トントントン」とノックする。風邪のかったるい体をフトンの中で、
そっと潜めた。  再び「トントントン」今度は息を殺した。
ドアノブを「ガチャガチャ」とやり、部屋の様子を窺うように静まり返った。
10秒か1分か、その静かな時間の長い事長い事。
ケイタイのある今だったら、着信ベル鳴らされて「野郎居るな!」とバレタな。
「いない」と諦めたのか、また階段をタタタタタッと降りて、アパートの玄関戸を
ガラガラと開けピシッと閉め戻って行った。
「ハーァ!」と長い溜め息をついて、この時ばかりは、ドアに旋錠しておいて
良かったーと思った。




ひとり暮らしで何が面白くないって、ひとりで飯食うことだべ。
料理人だから飯作るのは「ホホイのホイ!」でお手のもんだが、
自分で作って自分で食べる。 なんだかんだ言ってもひとりだ。
必然的にテレビでお笑い見て、「ハハハハ・・・」とひとりで笑いながら
、モゾモゾと飯食うのもナンだか寂しいべ。
キャビアだフォアグラだ、トリュフだクリュグだロマネ・コンティだのと
山海の珍味、美酒を並べても、美味いには美味いが愉しくないべ。
たとえ卓袱台(ちゃぶだい)(最近見ないね)の上に、メザシにタクアンを並べただけの食卓
でも家族の団欒あればこそ美味しくも愉しくもあろうと言うもんだ。
熟年離婚とか高齢化社会になり、孤食の虚しい食卓が増えそうだ。




ひとりだから、話し相手がいない当たり前の当然だ。
だから声を出さない。
朝、会社で「おはようございます」の挨拶が、その日始めての声なので、
かすれて出る。
「あっ、今日始めて声出したんだ!」と自分自身が始めて気が付くのだ。




大家さんに「朝目覚まし掛けてる」と問われて、「いいえ、何でですか?」
と言うと。
隣家の奥さんが、僕の部屋から目覚まし時計の音がずっと鳴りっぱなしで
「うるさい」と苦情がきたとの事。
朝はテレビにタイマーを掛けて目覚まし代わりにしていたから、
「そんなはずありませんね」と答えたものの、あらぬ疑いを掛けられ
憮然とした。
この嫌疑晴らさでおくものか!と、必勝を誓い翌朝を待った。
「チリリリィーンチリリリィーン・・・」と確かに目覚まし時計の音が
遠くに聞こえて来る。外に出て音のする方を探った。
その音の出所は「なな、なんと!」俺を疑った、当の本人の物置からではないか。
玄関の戸を叩くと、その奥さんと思しき人が出てきた。
「目覚ましの音、お宅の物置からですよ!」と語気を強めた。
「エッ?」と動揺を見せ、奥さんは物置に入り目覚まし時計の音を切った。
奥さんは気まずそうな顔をしたが、ひと言も詫びを言わないのだ。
「すいませんでした」だの「ごめんなさい」の、ひと言くらいあってもいいべや。
「ざまーみろ!」と勝ち誇ったように、その場を立ち去ってやった。
大家さんに経過を報告すると「あら、そうだったの。なんだかおかしいと
思ったんだよね・・・」 だって。
 それにしても「あのクソババァー ひと言ぐらい謝れー!」
今思っても腹が立つ。もう一度言わせてくれ。
「あのクソババァー ひと言謝れー!」




しかし、よく酒飲んで酔っ払って帰宅したものだ。
酔った末に着替えもせず、そのままフトンに寝るのもんだから、
朝起きると、身体は重痛いし服がシワだらけ。
服着たまま寝ると寝づらいけど酔っているから、もうどうでも眠たいのだ。


その夜も、朝方と言った方がいいか、酔っ払って帰宅した。
酒飲んで喉が渇いたので、コーヒーを飲もうとヤカンに水を注ぎ
ガスコンロで火にかけた。
お湯が沸くまでフトンの上で横になったのだが、そのまま寝込んでしまった。
目が覚めると部屋がやたら暑いのだ。
「ハッ!」と気付いて、フトンから飛び起きガスコンロを見ると、
水が蒸発したヤカンが直火に炙られ“ヤカンのポワレ”だ。
取っ手を握って「アチッ!」、流し台に置き蛇口から水を掛けると、
ジュウッー!と唸って蒸気を上げた。
「ホッ」として、ガスの元栓を締め、今度はちゃんとフトンの中に潜り込んで寝た。


ヤカンにコーヒーカップ1杯分の水しか注がなかったから良かったものの、
ヤカンに水をいっぱい注いでいたら、沸いたお湯が溢れ出て、
コンロの火を消しガスが充満して、「おらは死んじまっただー!」なんて
言っていられるが。今頃は、ご親戚一同集まり、30回忌の法要だ。
今思い出しても「ぞっ」とする。




ひとり暮らしでも、若い女性の部屋なら、
こぎれいでカワイイ小物なんか飾られ。センスの良い食器や、インテリアで
ユーミンの「やさしさに包まれて」のCDが、いい香りとなって漂う。
夢やロマンが朝陽と共に輝くけど。


男のひとり暮らしの部屋となると、玄関先にドタ靴がころがり。
服は脱ぎ捨てられ酒瓶がころがり、北島三郎さんの「風雪流れ旅」のレコードが唸り。
西日に照らされた万年床からは汗臭いニオイが立ち昇る。
部屋と言うよりは塒(ねぐら)で、夢もロマンもあったもんじゃない。



しかし、近頃の若い人達の、ひとり暮らし部屋はバス、
トイレは設置され、アパートではなくマンションになった。
先日あのアパートの前を偶然通ったが、もう跡形も無くコギレイなマンションが
建てられていた。
時は流れ時代は変り、今は昔。
若い頃のひとり暮らしアパートが、なつかしく思い出された
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